博多織には、800年以上受け継がれてきた伝統があります。
その長い歴史の中で、博多織の技術を守り、発展させ、多くの職人たちへ受け継いできた人物がいます。
その一人が、重要無形文化財「献上博多織」の保持者(人間国宝)である小川規三郎(おがわ きさぶろう)氏です。
小川規三郎氏は、博多織の伝統技術を極め、その卓越した技術と長年の功績が認められ、人間国宝に認定されました。
「献上博多織」の伝統を守り続けた名工
博多織を代表する柄として知られる「献上柄」。
仏具の独鈷(どっこ)と華皿(はなざら)、そして縞模様を組み合わせたこの伝統柄は、江戸時代に黒田藩が幕府へ献上したことから「献上博多織」と呼ばれるようになりました。
この伝統的な献上博多織の技術を守り続け、高い品質を追求しながら後世へ伝えてきたのが小川規三郎氏です。
一本の帯を織り上げるためには、素材選びから意匠設計、整経、製織に至るまで、数多くの工程があり、どの工程にも熟練した技術が求められます。
小川氏は、それぞれの工程に妥協することなく向き合い、博多織本来の風合いや締め心地、美しさを追求し続けました。
技術だけではなく、人を育てることにも尽力
人間国宝というと、自ら作品を制作する姿が注目されますが、小川規三郎氏の功績は、それだけではありません。
後進の育成にも力を注ぎ、多くの職人へ博多織の技術と精神を伝え続けました。
伝統工芸は、作品だけでは未来へ残すことはできません。
技術を受け継ぐ人がいて初めて、その文化は未来へつながります。
現在も博多織産地で活躍する多くの職人や作家たちは、こうした先人たちが築き上げた技術の上に、それぞれのものづくりを続けています。
博多織の魅力は、受け継がれる技術にある
現代では、織機や設計技術の進歩により、博多織の表現も大きく広がっています。
しかし、その根底にあるのは、長い年月をかけて受け継がれてきた伝統技術です。
締めやすく、美しく、丈夫で長く愛用できる博多織。
その品質を支えているのは、小川規三郎氏をはじめ、多くの名工たちが守り続けてきた確かな技術にほかなりません。
筑前織物も、その想いを未来へ
筑前織物もまた、博多織の伝統を受け継ぐ織元の一つとして、先人たちが築いてきた技術を大切にしながら、新しい時代のものづくりに挑戦しています。
伝統を守ることは、昔と同じものを作り続けることではありません。
受け継いだ技術を大切にしながら、新しいデザインや新しい用途、新しい価値を創造し、次の世代へつないでいくことも、私たちの大切な使命です。
人間国宝・小川規三郎氏が守り続けた博多織の精神は、今もなお博多織産地に息づいています。
その技術と想いを未来へ受け継ぎながら、筑前織物も博多織の魅力を全国へ、そして世界へ発信し続けてまいります。
人間国宝・小川規三郎氏 略歴
1936年(昭和11年)、福岡市博多区に生まれる。中学校卒業後、父であり人間国宝(重要無形文化財保持者)である小川善三郎氏に師事し、献上博多織の技術を学ぶ。1983年に父の後を継ぎ、家業を継承。日本伝統工芸展などで数多くの作品を発表し、高い評価を受ける。
2001年には「現代の名工(卓越した技能者)」に選ばれ、2003年には黄綬褒章を受章。同年、**重要無形文化財「献上博多織」保持者(人間国宝)**に認定された。その後も博多織デベロップメントカレッジ(博多織DC)の学長として後進の育成に尽力し、博多織の技術と精神を次世代へ伝え続けている。
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