博多織を未来へつなぐ。株式会社オリツギ代表・山本祥太さんの挑戦
博多織をはじめとする伝統工芸を、これからの時代にどうつないでいくのか。
その答えのひとつとして、福岡で新しい取り組みを続けているのが、株式会社オリツギ代表の山本祥太さんです。
山本さんは、もともと呉服業界で仕事をしていた経験を持ち、その後Webマーケティングの世界へ。2024年に株式会社オリツギを設立し、現在はマーケティング支援を行う一方、伝統工芸や地域文化を次世代につなぐ活動にも力を入れています。

呉服業界からマーケティングの世界へ
山本さんが染織文化に興味を持つきっかけとなったのは、京都での学生時代。
着物文化に触れ、職人の仕事や染織の美しさに魅せられたことから、呉服業界へ進みます。
その後、Webマーケティングの分野へと活動の場を広げ、企業の事業を成長させるためのマーケティングに携わってきました。
一見すると、伝統工芸とWebマーケティングは離れた世界に見えます。
しかし山本さんにとって、この二つの経験は現在の活動につながっています。
それが、
「伝統文化の魅力を、現代の人にどう届けるか」
というテーマです。


株式会社オリツギが取り組むこと
株式会社オリツギは、マーケティングを通じて文化や地域の魅力を次の世代へつないでいく会社です。
優れた技術や歴史があっても、それを知る人が少なくなれば、文化は次第に生活から離れてしまいます。
そこで、マーケティングの力を使い、
「知ってもらう」
↓
「興味を持ってもらう」
↓
「実際に触れてもらう」
という新しい接点をつくろうとしています。
これは、伝統をそのまま残すという考え方とは少し違います。
伝統を現代の暮らしにもう一度置き直す。
そこにオリツギの特徴があります。


博多織を「特別なもの」から「日常」へ
その象徴ともいえる取り組みが、山本さんが立ち上げたブランド「ORIO(オリオ)」です。
ORIOは、染織文化を現代の暮らしに取り入れることを目指したブランド。
第一弾では、博多織の帯地のハギレを活用し、Tシャツへと再構築しました。
伝統工芸というと、着物や帯など「特別な日に身につけるもの」というイメージがあります。
そこで、あえて日常的なTシャツという形にする。
博多織の生地そのものを見せるだけではなく、その背景にある「織り」「職人」「産地」「歴史」まで含めて、新しい形で伝えていく取り組みです。


筑前織物もORIOのものづくりに参加
ORIOの取り組みには、筑前織物も製造協力という形で関わっています。
伝統産業を未来につなぐためには、職人や織元だけでも、マーケティング会社だけでも難しい。
「つくる側」と「伝える側」が一緒になり、新しい商品や新しい市場をつくっていく。
ORIOの取り組みは、まさにその一例だと感じています。


私と山本さん。10数年続くご縁
ここからは、少し私自身の目線で山本さんについて書きたいと思います。
私と山本さんとの付き合いは、もう10数年になります。
これまで仕事を通じてさまざまな話をしてきましたが、特に親交が深くなったのは、山本さんが独立する前後だったように思います。
今でも印象に残っているのが、独立する前に一緒に食事をしたときのことです。
そのとき山本さんが話してくれた、
「実は……」
から始まる新しい挑戦の話。
これから何をしたいのか。
どんなことに挑戦したいのか。
そして、その先にどんな世界をつくりたいのか。
まだ会社として形になる前でしたが、そこには明確な野望とビジョンがありました。
正直、そのときの熱量は今でもよく覚えています。
「本当にそこまでやるのか」と思うほど、熱く語っていたことも印象に残っています。
そして今。
オリツギという会社を立ち上げ、ORIOという新しいブランドをつくり、伝統工芸や地域文化について発信しながら、全国を飛び回っている。
あのとき話していた「新しい挑戦」が、少しずつ現実になっている姿を見ると、本当にすごいなと思います。

全国に「応援したい人」が増えている
山本さんの活動を見ていると、単に商品を販売しているだけではないことにも気づきます。
さまざまな産地を訪ね、職人と話し、地域の人と出会い、その魅力を発信する。
その姿を見て、
「山本さんがやっていることを応援したい」
「この人が紹介するものなら見てみたい」
と思う人が、全国に少しずつ増えているのではないでしょうか。
それは、マーケティングの数字だけでは測れない、とても大切な財産だと思います。
伝統工芸を未来につなぐには、商品を買ってくれる人だけではなく、
「この人たちの挑戦を応援したい」
と思ってくれる人を増やすことも大切なのだと思います。
山本さんの活動には、そうした「人と人とのつながり」を生み出す力があります。
「守る」だけではなく「ひらく」
山本さんの活動で印象的なのが、伝統文化を「守る」だけで終わらせないという考え方です。
伝統工芸には、長い歴史があります。
しかし、歴史があるからといって、そのままの形で未来まで残るとは限りません。
使う人がいて、興味を持つ人がいて、新しい価値を感じる人がいて、初めて文化は次の世代へ続いていきます。
だからこそ、伝統を「ひらく」。
これまで接点のなかった人たちに届ける。
異なる産地や素材と組み合わせる。
新しい商品をつくる。
そして、これまでとは違う場所で伝統工芸と出会ってもらう。
そんな挑戦を続けているのが、山本さんなのだと思います。

山本さんの新しい挑戦。「糸をたどれば」
最近では、山本さんの新しい活動として「糸をたどれば」というポッドキャストも始まっています。
布や糸を入り口に、染織文化の歴史や、その背景にある日本的な美意識などを掘り下げていく番組です。
商品だけを見るのではなく、
「なぜ、このようなものが生まれたのか」
「そこにはどんな文化や人の営みがあったのか」
までたどっていく。
これもまた、山本さんらしい取り組みだと思います。
これまでWebマーケティングという「伝える技術」を磨いてきた山本さんが、今度は「糸」を入り口に文化そのものを掘り下げていく。
オリツギの活動が、商品開発だけではなく、文化を知るきっかけそのものへと広がっているように感じます。
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私たちも、負けずに挑戦していきたい
山本さんの活動を見ていると、私自身も刺激を受けます。
筑前織物も、長い間、博多織のものづくりに携わってきました。
私たちには、産地問屋として積み重ねてきた経験があり、その後メーカーとして自社工場を持ち、職人とともにものづくりを続けてきた歴史があります。
だからこそ、私たちにもできることがあると思っています。
良いものをつくる。
産地を守る。
職人の技術を次の世代につなぐ。
それだけではなく、どう伝えるのか、どう新しい人に届けるのか、そして博多織からどんな新しい価値を生み出せるのか。
そこにも、もっと挑戦していきたい。
山本さんが全国を飛び回り、新しい出会いをつくりながら挑戦を続けているように、私たち筑前織物も、これまで培ってきたものを土台に、これからの時代に向けて挑戦を続けていきたいと思います。
山本さんとは、これからも良き仲間として、そして良きライバルとして。
お互いに刺激を受けながら、切磋琢磨していければと思っています。
伝統は、過去のものではない。
それを未来へつなぐのは、今を生きる私たちです。
これから山本さんがどんな挑戦をしていくのか。
そして、筑前織物がどんな未来をつくっていけるのか。
私自身も楽しみにしながら、一つひとつ、できることを一生懸命続けていきたいと思います。
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