博多織は、経糸と緯糸を織機にセットすれば、すぐに織り始められるわけではありません。
前回ご紹介した「整経と糸繰り」の後にも、製織に向けた細かな準備が続きます。
今回は、経糸を織機につなぐ「経継ぎ(たてつぎ)」と、緯糸を準備する「管巻き(くだまき)」です。

経継ぎ(たてつぎ)|最後の一本まで続く緊張感
整経で巻き上げた経糸を、織機にかかっている前の経糸と一本ずつ結びつけていきます。
機仕掛けによって経糸の本数は異なりますが、基本的には新しく準備した経糸と、織機にかかっている前の経糸の本数を合わせます。
さらに、色ごとの本数も揃える必要があります。
例えば、複数の色を使った経糸であれば、青は青、黄色は黄色というように、決められた配列を崩さず一本ずつつないでいきます。
ここで難しいのが、最後の一本まで正確に合うかということ。
何千本もの細い絹糸を一本ずつ結んでいくため、途中で一本でも数や配列を間違えると、最後に糸が余ったり、不足したりすることがあります。
もし合わなければ、何千本もの経糸を一本一本確認し、間違っている場所を探して、そこから結び直します。
だからこそ、最後の一本を結び終えるまで、ハラハラドキドキが続きます。
そして、もう一つ重要なのが結ぶときのテンションです。
経糸は、ただつながっていればいいわけではありません。
一本一本をできるだけ同じテンションで結ぶことで、経継ぎを終えて製織へ移ったときにも、経糸の張り具合を揃えやすくなります。
糸を結ぶ。
ただそれだけに見える作業の中にも、経糸の本数、色の配列、結び目、テンション。
一つひとつを正確に揃える技術が求められています。

管巻き(くだまき)|緯糸を「織れる状態」にする
管巻きは、緯糸を杼(シャトル)にセットするための「管」に巻いていく工程です。
緯糸は、作品によって使う色や合わせる本数が変わります。
一色の緯糸で織るものもあれば、4色、5色と複数の色を使う作品もあります。
そのため、製織前には、これから使う緯糸を必要な分だけ準備しておく必要があります。
そして管巻きは、製織前だけの作業ではありません。

製織中も、常に次の緯糸を準備しています。
織機で製織が進んでいく一方で、次に使う管を切らさないよう、色や本数を見ながら管巻きを続けます。
さらに、ただ巻いているだけではありません。
糸にキズや段がないかを確認しながら巻いていきます。
製織では、経糸のテンションを調整したり、デザインによっては重りを使って張り具合を調整したりすることもあります。
織り上がりを確認しながら経糸を調整し、その一方で次に必要となる緯糸を準備する。
製織は、一つの作業だけに集中していればよいわけではありません。
「織る」と「次の準備」を同時に進めていく。
それも、博多織の製織現場の特徴の一つです。

製織までの準備が、織物を支える
ここまで見てきたように、博多織は製織が始まるまでにも、多くの工程があります。
意匠を決め、組織を設計し、整経で経糸を準備し、糸を繰り、経継ぎで一本ずつつなぎ、管巻きで緯糸を準備する。
一つひとつは細かな作業ですが、その積み重ねが製織の土台になります。
特に経糸は、織物の柄や組織を支える重要な存在。
だからこそ、製織に入る前の準備には多くの時間がかかります。
丁寧に準備を終えて、ようやく製織へ。
次回はいよいよ、準備された経糸と緯糸が交わり、一枚の博多織になっていく「製織」の工程をご紹介します。
▪️博多織ができるまで①|すべての始まりは「意匠」からは、こちらへ
▪️博多織ができるまで②|経糸を作る「糸繰り」と「整経」は、こちらへ
▪️筑前織物のこだわりは、こちらへ




